取り戻した声で思いを
全身の筋力が徐々に低下する「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者で、玉村町下新田の町田玲子さん(61)が、宇都宮市で10月6日に開かれるALS当事者の発表会に参加する。気管切開の手術で一度は声を失ったが、「家族と会話したい」という思いで、新しい発声法に挑戦している。本番では自らの声で、思いを伝える。
ALS患者・町田さん(玉村)
写真キャプション:「発表を通じて人の役に立てたらうれしい」と話す町田さん(左)と夫の利文さん
6日に宇都宮 当事者の発表会参加
町田さんが参加するのは、難病患者の支援団体などが全国で開く催し「ALS患者さんに聞こう!『自分をプレゼン!』」。町田さんを含め、群馬、栃木、茨城の北関東3県の当事者5人が発表する。
町田さんは2019年9月にALSと診断された。自力での呼吸が徐々に難しくなり、22年6月に人工呼吸器装着のため気管を切開した。この時に口から肺への気道を閉じたため、声を出せなくなった。
意思疎通には指さしボードやタブレット端末を使っていたが、夫の利文さん(61)ら家族に思いがうまく伝わらず、悩むことも多かったという。
転機はおよそ1年後。言葉を伝えようと「ロパク」をして、訪問看護師から「言っていることが分かる」と驚かれたのがきっかけだった。インターネットで調べ
ると、喉頭がん手術などで声帯を失った人が、食道に空気を取り込んで声を出す「食道発声」という方法があることを知った。
初めは自己流で練習し、今年5月から言語聴覚士のサポートを受け始めた。喉頭を摘出した人が県内各地で食道発声などを練習する「群鈴会」(藤岡市)にも参加し、多くの言葉を発音できるようになった。
自身の病気と向き合いつつ、本年度から日本AIS協会県支部長として患者や家族の交流にも取り組んでいる。発表会では、声帯で話していた頃の声を合成した音声と、現在の食道発声の声を交えて、思いを伝える予定だ。
ALSの進行は人によって異なり、全ての患者が町田さんのように声を出せるわけではない。それでも「私の挑戦が誰かの役に立つかもしれない。病気で悩んでいる人に、最初から声を諦めないでと伝えたい」と願っている。
発表会は6日午後1時から宇都宮市のライトキューブ宇都宮で開かれる。ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」でも配信する。参加申し込みは専用ページ=QRコード=から。問い合わせは主催のNPO法人ICT救助隊(☎03・6426・2159)へ。(真下達也)
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